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「気配?」
俺が反復してもっと詳しくと促すと、ルシフェルは言葉がなかなか見つからないのか、首を捻って説明し始める。
「あー、んん、何つーか、神の力が空気に万遍なく混じってるって言うか……、多分、この世界そのものが神の御加護を受けてるのかもしんない」
「世界が神の御加護を受けてる? そんなことがあるのか?」
あの神が特定の世界を贔屓するとは、あんまり思えないんだが。
「いや、普通はねぇ。神の力がこんなに有り触れてるなんて、普通は有り得ない」
ルシフェルはきっぱりと言う。
「多分、これは神も予測してなかったようなことだと思う。世界の創造の過程でちょっと失敗したとかな」
神の予測しえなかった現象。
――『神理』に近づき過ぎててね。
こないだの茶会で神の言っていた台詞が、頭の中で反芻された。
断言はできないが、世界が神の御加護を受けているというこの不思議な現象が『神理』と関係があるのかもしれない。
そんなことを考えつつ、俺はルシフェルに質問を投げかけた。
「つまり、神の力がそこら辺にたくさんあるおかげで、神の御加護のないお前に神の奇跡とかいう力が使えると?」
「まぁ、要はそういうこと」
ルシフェルは頷いて、人差し指を立てて説明する。
「そもそも天使はな、神の御加護があるおかげで神の力を自ら生み出せるんだ。でも、御加護のない俺にはそれができない」
ルシフェルはそこで一息ついてから、また説明を続ける。
「でも、空気中に含まれてる神の力を俺の身体に集めれば、それを使って神の奇跡は使えるってこと。そもそも天使の身体は神の力を受け入れやすく、扱いやすく出来てるし、それは俺も例外じゃない。堕天になって御加護はなくなっても、肉体はそのまま天使のものだから」
「成る程……、空気に神の力が含まれてるっていうこの世界特有の事象が、お前にとっては得になった訳だ」
だとしたら、この世界でのある程度のアクシデントはルシフェルがいるだけで回避できそうだ。何と言っても、神の奇跡が使えるんだし。
神理云々は気になるが、まぁ今考えても答えは出ない。今考えるべきは、これからのことだろう。
とりあえず、森を抜けてひとのいる場所を探すのが得策か。
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