王立ギルド『開け胡麻』

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 女性から受け取った用紙二枚とペンを手に、俺は近くの空いたテーブルを陣取る。向かいの席にルシフェルが座った。 「ほら、先に書け」  貰った用紙の二枚のうち一枚をペンと共にルシフェルに渡し、俺は残った一枚に目を通す。  まず一番最初に書かれていたのは、このギルドにおけるルール。 『一、裏切りは死罪とする。  一、依頼中の死傷について、当ギルドは一切責任を負わないものとする。  一、当ギルドへの登録が受理された者は、その時をもって以上に同意したとみなす。    ギルドマスター』  それだけ。  その下に必要事項を記入するための四角い欄があった。  簡潔過ぎるルールだが……、まぁ難しくどうこう書かれるよりはマシか。  と、不意に視界に入ったルシフェルがペンを片手にそわそわと困った表情をしていた。眉を潜めて「どうした」と問えば、ルシフェルは苦笑して言った。 「字が読めねぇんだけど……」  どうやら、この世界の文字が理解できなかったようだ。  そういえば、俺はあまりに当たり前に読めたり話したりできたので気づいていなかったが、文字や言語は前世と変わっていないのか。 「ん、ならお前、他の奴との会話もできないのか?」  俺とルシフェルの会話は日本語でなされているし、字が読めないってことはつまりルシフェルはこの世界の言語は話せないってことだろう(なんでルシフェルが日本語を話せるのかが疑問だが)。  俺はそう思ったのだが、ルシフェルは「うぅん」と首を振った。 「言葉は通じるぜ。天使とか神とかは、言葉が理解できる限り相手が何であろうと会話できるってことになってんの。神のお告げが通じなかったら困るだろ? 文字は別問題だから、わかんないけど」 「ふぅん……」  便利な話だ。  俺は転生したらほとんど毎回知らない言語と格闘してるってのに。  まぁ姿形が似通った世界の言語は似てたりそのままだったりすることもあるけど、そんなのは稀だし。  俺の場合は赤ちゃんが言葉を覚えるのとは違うから、毎回本当に苦労する。 「まぁいいや、それ貸せ。俺が書いてやる。文字は暇なときに教えてやるから」  文字が読めないってのはこの先不便だろうし、早めに覚えてもらうに越したことはない。
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