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「はーい」
元気よく返事するルシフェルの手からペンを受け取って、それをくるくると弄びながら俺は用紙を自分の方へと引き寄せた。
ちなみにこの場合のペンは、ペンはペンでもボールペンではなく羽根ペンで、紙は羊皮紙。いかにもファンタジーらしい。
とりあえず先にルシフェルの方の用紙を記入するべく視線を落とす。記入欄の一番最初には、まぁ当然ながら『名前』と書かれていた。
ルシフェル、まで書いてぴたりと俺は手を止めた。
「なぁルシフェル、お前苗字どうする」
「苗字? 必要なのか?」
「いや……、わからんが」
日本や他の国が昔そうであったように、一部の者しか苗字を持たないということはよくある話だ。ことに、この街の文明レベルから言ってその可能性は多いにある。
「ま、ないよりある方がいいんじゃねぇ? よくわかんないけど」
ルシフェルの言葉に、俺はまぁそうかと納得して頷いた。
「そうだな。んじゃ、何がいい? 言ってみろ」
しばらくルシフェルは腕を組んで考えていたが、面倒になったのか匙を投げた。
「思いつかね。御主人様が適当につけてくれよ。俺は御主人様の下僕だから、それなら何でもいいよ」
ルシフェルがそう言うので、俺は「そうか」と返事して本当に適当に思いついたものを口にする。
「ルシフェル・メートルドテル。ミドルネームも含めて、ルシフェル・ハウスホーフ・マイスター・メートルドテルな。覚えとけ」
「え、ルシフェル・ハウス……なんて? 長くね? もう一回言ってくれ」
「ルシフェル・ハウスホーフ・マイスター・メートルドテル」
「ルシフェル・ハウスホーフ・ま、……マイマスター? メートルリットル?」
「何だ、そっちの方がいいか?」
ルシフェル・ハウスホーフ・マイマスター・メートルリットル。
それはそれで言いやすいな。いやむしろ……、こっちの方が良いかも?
「やっぱそっちにするわ。俺が考えたのより言いやすい。そっち採用。ルシフェル・ハウスホーフ・マイマスター・メートルリットル」
「えぇえ!?」
「次からはルシフェル・メートルリットルって名乗れよ」
そう言いながら、俺は『ルシフェル・ハウスホーフ・メートルリットル』と名前の欄に記入する。マイマスターは、長くなるので割愛。
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