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「御主人様って、たまに物凄く雑だよね……」
「何か言ったか?」
「いや、何も!」
そんな会話をしながら俺は『年齢』の欄を適当に『16』と書いて埋める。どうせこの堕天使に本当の年齢を聞いたところでお話にはならないだろうと判断しての結果だ。見た目だけ見れば、ルシフェルはまぁ十六から十八の青年なのだ。
次の当て嵌まるものにチェックを入れる『性別』の欄は、もちろん男の欄にチェックした。
そこまではスムーズだったのだが、しかし次の記入欄で俺は手を止めた。
『魔法適正
□なし
□唱式
□陣式
□その他
※当て嵌まる項目にチェックを入れて下さい』
「…………おいルシフェル、唱式と陣式ってなんだ」
「知らね。何それ?」
見慣れない文字列にルシフェルに聞いてみたが、即答されてしまった。
何これ。
唱式、陣式……さっぱりわからん。
まぁでも魔法にかかわるものようだし……、言葉から予想するに、唱式の唱は、詠唱の唱か? 呪文詠唱の唱。んで陣式の陣は魔法陣の陣。
……いや、でもそれだけじゃよくわからん。ていうか変に予想だけで判断して記入する方が失敗しそうだ。
未記入にして後から受付のひとに聞くのがベストか。
記入するべき欄はこれで全部。
ルシフェルの用紙は邪魔にならないよう横にずらし、代わりにまだ真っ白な俺の用紙を手前に持ってくる。
もちろんそれはルシフェルの物と全く同じなので、最初に記入するべき物は、『名前』。無言でさらさら記入していると、テーブルに頬杖をついたルシフェルが「そういえば」と思い出したように言った。
「俺、御主人様の名前知らないかも。なんて名前なんだ? あ、生まれたときから親いないし、もしかして名前ないのか?」
「いや、そんなことはない。ある」
すでに名前を書き終え、『年齢』の欄に『14』と書きながら俺は言った。
「父親の――魔王の名前を貰ってる」
「へぇ、何なに?」
少しわくわくとした声音でルシフェルに問われ、俺は羽根ペンをテーブルに置いてその名前を口にした。
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