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「――ベレッタ・エクレルール・マキテイコン・アエロスカフォス・アレマ・レッツター・アオスヴェーク・グラナーテ・アヴィアノースィツ・ド・ラ・ミッシレ十世」
…………。
……………………。
「………………………………エ?」
長い沈黙の後、ルシフェルが聞き返した。
「今の何?」
「名前」
「何の?」
「俺の」
ぽかん、とルシフェルが口を開けた。
「…………いや待って。長い。物凄く長い。んで、十世? 最後十世って言った?」
「言った」
「御主人様ってどこで何してる方だっけ?」
「この世界で魔王やってる」
「…………そうだった」
ルシフェルが額に手を当て、疲れたように溜息を吐く。
「俺もう駄目だぁ……。自分の名前も覚えらんないのに、御主人様の名前もそんな長いんじゃ……、絶対覚えらんねぇよ」
「……全部覚える必要はない。さすがに俺もこの長ったらしい名前をそのまま使うつもりはないからな」
さすがに本名じゃ受付の女性に変な目で見られるだろうと判断し、用紙には略した名前を記入してある。
「いいか、お前の名前はルシフェル・ハウスホーフ・メートルリットル。俺の名前は、ベレッタ・エクレルール・ミッシレだ。これだけは頭に叩き込め、いいな下僕」
「御意です、御主人様……。えと、俺がルシフェル・ハウスホーフ・メートルリットル? だよな? で、御主人様がベレッタ・エクレア……」
「エクレルール・ミッシレだ」
そんな甘そうな名前ではない。
『性別』はもちろん『男』、『魔法』の欄はルシフェルのものと同じく未記入のまま、俺は立ち上がって用紙とペンを受付の女性に渡した。
ルシフェルが慌てて俺を追って立ち上がる気配がする。
「ベレッタ・エクレルール・ミッシレ様、ルシフェル・ハウスホーフ・メートルリットル様で間違いございませんね?」
用紙を受けとった女性は、用紙と俺達を見比べながら確認を取る。
「あぁ」
俺が頷くと、女性はひと通り用紙に目を通した後、顔をあげた。賢そうな切れ長の目が俺達を捉える。
「……失礼ですが、お二方は貴族様でいらっしゃいますか?」
「いや、違うが」
そう答えると、女性は少し怪訝そうな顔つきになる。
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