王立ギルド『開け胡麻』

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 ひと通り書類の内容を理解した俺は、書類を置いてそんなルシフェルに声をかけた。 「この資料からわかったことだが――この国の名前はキルシュバオムというらしい。正しくは、キルシュバオム王国。世界地図がないから詳しくはわからんが、多分あまり大きい国じゃない」 「……キルシュバオム」  どうやら忘れっぽいらしいルシフェルは、頭に叩き込むようにそのワードを復唱する。 「この国の身分制度は、大きく分けて上から王族、貴族、平民。これは俺の推測だが、その下に奴隷なんかも存在すると思う」  学校案内に近いその書類では、さすがにそこまでわからない。ただ俺の今までの経験から言って、多分そうだ。 「王族はそのまま、王の一族。そして貴族は、魔法使いの家系だ」  魔法の力は遺伝に寄るもので、魔法使いの子供は魔法使いとして生まれてくる。 「でもたまに、平民でも魔法使いがいるみたいだな……。いや、でもこれは多分、隠し子とか、そういう類だな」  正式に貴族の子供でなかっただけで、魔法使いの親を持つ者。 「そういう奴らは形こそ平民だが、まぁ学院を卒業する時点で事実上の貴族になるみたいだ。まぁ、これを読む限りだが」  そう言って、俺は書類をひらひらと示した。  ルシフェルはこれだけの説明でも難易度が高いらしく、腕を組んで「うぅーん」と難しそうに眉を寄せる。 「ルシフェル、お前も平民なんだからな?」 「あ、うん。大丈夫……」  本当に大丈夫かなのか怪しいが、とりあえず俺は説明を続ける。 「で、ここでひとつ問題が生じた」 「問題?」 「あぁ」  俺は頷く。 「――俺の記憶では、この世界の魔法は誰にでも使えたはずだ」  前魔王が俺が三十一度目の人生で封印した魔王と同一人物である以上、あの世界とこの世界は同一で間違いない、はずだ。  しかし、街の風景も国も、魔法ですらあの世界とは違う。  最初は時代がいくつも過ぎ去るほど長い時が経ったのだと思ったが……、考えてみれば、それはおかしい。長い時が経ったにしては、文明レベルが低すぎるのだ。 「理解できん。訳がわからん」  撹拌される思考をに苛々しながら髪をぐしゃぐしゃと混ぜ、俺は溜息混じりにテーブルに伏せる。 「ここは、何処なんだよ……」
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