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薔薇の浮かんだ風呂に入ってさっぱりとした俺は、新しいシャツとスラックスに着替えてソファで寛いでいた。
ルシフェルは俺の後に入浴したため、まだ風呂場で念願の薔薇風呂を満喫している。
大きなソファの背にもたれ、その心地よさに俺はうとうととしていた。
というのも、昨日から俺は一睡もしていない。夜は酒場と化したギルドでは(酒場なんだけど)、うるさくて眠れなかったのだ。
あの酔っ払いの喧騒の中、ルシフェルはテーブルに伏せてぐっすりと熟睡していたようで、羨ましい限りである。
とにかくやっと眠ることができる状況に、俺はすぐに船を漕ぎ始めていた。魔王のくせに、睡眠は普通に必要なのである。
と。
「!?」
突然身体を襲った浮遊感に、ほとんど眠りかけていた意識が一気に覚醒する。
「あ、起こしちまったか?」
非常事態かと構えたが、ただルシフェルが俺を姫抱っこしていただけだった。
非常事態ではないのかと安心したら、またすぐに俺を眠気が襲う。嗚呼、眠たい。
「ソファで寝てたから、ベッドに運ぼうと思ったんだけど」
「……気色の悪いことをするな。降ろせ。ベッドなら自分で行ける」
男を抱き上げて何が楽しいんだ。
「御主人様の顔なら関係ないだろ、男とか女とか。ていうかそもそも、元天使の俺に性別差の概念はほとんどないしな」
ルシフェルはそう言いながら、俺をゆっくりと床に降ろした。
「そうなのか? あぁでも、確かに天使が男女どっちかを贔屓するイメージはないな……ふぁ」
欠伸をひとつしながら、俺は馬鹿でかいベッドまで歩く。
ベッドにたどり着くと、顔からばたっと一気に倒れ込んだ。ていうか、横にゆったり寝れる広さのベッドってどうなんだろう。
「うん、そうだろ? だから俺、男も女もおんなじくらい好きだぜ」
「そのホスト顔で言うと、別の意味に聞こえなくもないな」
あ、でもま、それでもあながち間違っちゃいないのか。
クッション並に柔らくて大きい枕に頭を埋めて、口元近くまで毛布を被る。
「寝る。非常事態以外起こすな。余計なことは一切するな。以上」
びっとルシフェルに人差し指を向け、きっちりと命令する。ちゃんと命令しないと、能天気な男子高校生ルシフェルは何だかんだやってしまう傾向にあるのだ。
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