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「はぁい、御意です御主人様……ん?」
ルシフェルが、何かに気づいて自分を指していた俺の左腕を掴んだ。そして、俺の掌を開いてまじまじと見る。
「御主人様、これ何?」
俺は差し迫る眠気もあって、不機嫌な声を出して答えた。
「何って……、番号だろ。神が転生者につけた番号。お前も元天使なら知ってんだろ?」
あのバ神のせいで何度も何度も転生し、あらゆる人生を繰り返しているのは、べつに俺だけではない。
神によれば、俺を含めてその数は千。
そしてそのそれぞれの区別をつけるために、転生者には番号が振られている。番号でもつけない限り、神には人間なんてちっぽけな蟻の区別はつかないのだ。
だから何度生まれ変わっても、俺の左掌にはタトゥーみたいにその番号が変わらず記されている。
「そりゃ、知ってるけど……」
「何かあるのか?」
「いや……、…………」
ルシフェルは俺の掌から目を離さないまま、意味深に沈黙する。
いつもの俺ならその沈黙の意味を問うところだが、今の俺はそれよりも眠気に負けていた。
沈黙に、瞼が自然と下がっていく。
意識がブラックアウトする寸前、ルシフェルの小さな呟きが聞こえた気がした。
「ろっぴゃく、ろくじゅう、ろく……」
◆ ◆ ◆
結局、目が覚めたのは次の日の朝だった。ほとんど丸一日寝ていたらしい。さすがに寝過ぎた。
「さて、少々予定を繰り下げはしたが、今日こそコワンに向かうぞ」
「御意です、御主人様!」
外出着に着替え、俺達は城を出るために再び魔王城の入口へと向かった。道中、そろそろ腐敗しそうな父親の遺体を魔法で火葬しておく。
そこでわかったことだが、なぜか魔王城は神の力がなく、ルシフェルは神の奇跡を使用できない。
対して、俺は地上と違って物を通さなくても普通に魔法が使うことができる。
何がどうしてそうなのかは全くわからないが、でも神に任された仕事に関係がありそうな気がするし、このことは頭の隅にでも留めておこう(いや、まぁ絶対忘れないんだけど)。
「でも御主人様、どうやって地上に降りるんだ? 前と一緒で、俺の力で着地するのか? それとも、御主人様の魔法?」
「俺の魔法だ」
あの巨大な扉を蹴り開け、俺はルシフェルの腕を掴む。離れないよう、ルシフェルにも俺の腕を掴み返させた。
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