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「転移魔法で行くのか?」
ルシフェルが聞くが、俺は首を振る。
「それならわざわざ玄関まで来た意味がないだろう。それに、転移魔法ってのはそんなにほいほい使えるような便利な代物じゃねぇんだ」
「あぁ、一日に一回的なやつ?」
「お前はゲームのし過ぎだ」
現実にそんな無条件な制限はねぇよ。
「転移魔法ってのは、ある程度条件の整った場所にしか転移できない。魔王の俺でさえ、魔王城以外への転移はできないくらいだ」
「……ふぅん、成る程なぁ。ちなみにだけど、俺も転移まがいのことができるんだぜ。知ってたか?」
自慢げにルシフェルが胸を張る。
「多分神が結んだ主従契約のおかげなんだけどな、俺と御主人様がどんなに離れていても、御主人様が俺を呼ぶだけでいつでも俺は馳せ参じられるんだ。凄ぇだろ」
「初耳だぞ。何でそんな便利そうなことを早く言わない」
あぁでもそういえば、ルシフェルと初めて会った時も、こいつの名前を呼んだんだっけ。
あれは神が『僕がプレゼントした下僕は、名前呼んだらすぐに来るから。名前はルシフェルね』と言ったからそうしただけだったんだが……、成る程、そういう意味があったのか。
そういや、何でルシフェルはルシフェルって名前なんだ? 確かこれって、俺の故郷では堕天使の名前だったはず。
確かにルシフェルは堕天使だが、でもまさか神が生んだ時から堕天になるなんてわかっていないはずだし。いや、しかしあの神のこと、もしかしたらわかっていてそうしたのかも……?
まあそんなの、今はどうでもいいか。考えたところで、答えは見つからないだろう。
「つまり、お前が必要なときは呼べば良いのか……、覚えとく。それじゃルシフェル、行くぞ」
俺はたんっと床を蹴って、俺は魔王城の外、つまり空へと飛び出した。
「あぁ、うん。結局どうな魔法を使――ってえええ!?」
もちろん、離れないようしっかりと掴んだルシフェルの腕は離していない。
俺に引っ張られるままに空中に身を投じてしまったルシフェルは、ぎゃああああと喧しく悲鳴をあげる。
「落ちる! 落ちるって御主人様!」
「残念ながら、もう落ちてる」
俺は言いながら、靴に流した魔力で魔法陣を展開する。
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