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その魔法陣は、前回魔王城から出る時に使った魔法陣と全く同じ。失敗に終わった前回とは違い、今回は媒体に靴を使ったのでその心配はない。
本来なら、その魔法陣が床になるはずだったのだが――。
「――へぶっ!」
その魔法陣に俺とルシフェルが顔から着地してから十秒ちょっとで、魔法陣は消え失せてしまった。
あと、同時にルシフェルが気絶した。
静かになったし、まぁいいや。
「……ふむ」
ルシフェルの堕天使は『飛べない』法則は、つまり魔法で『浮かぶ』ことにも該当するらしい。
まぁ、俺にとってそれが想定外だったという訳ではないが。
ルシフェルを肩に担ぎ、俺はもう一度靴から直径二メートルほどの魔法陣を展開、蹴って近くに飛ばす。それを六回繰り返し、俺の周りを囲むように配置する。
上、下、右、左、前、後ろ。
その六つの魔法陣が光り始めた途端、魔法陣に囲まれた空間の重力が逆転する。
『グラビティ・オペレーション』。
指定範囲内の重力操作。
必然的に六つもの魔法陣を展開しなければならないために、わりと難易度の高い魔法だ。
上の魔法陣を床にすとんと着地し、俺は逆さまになったままふぅと息を吐いた。成功しなかったらどうしようかと思ってた。薔薇地獄の二の舞は御免である。
と、身体は魔法陣に安定するも、長い髪とひらひらした服はばさぁと本当の重力に従ってぶら下がった。
実はこの魔法、魔法陣の特性上魔力のある生物にしか作用しない。
自分で言っておいて何だが『指定範囲内の重力操作』という説明には語弊があり、正しくは『指定範囲内の有魔力生物にかかる重力操作』。
この魔法は有魔力生物の血に流れる魔力に作用し、その重力を歪めるもの。
血の流れていない髪や、非生物である服には作用しない。
空間ごと重力を歪めることは一応可能だが、非常に燃費が悪い。ので、使わない。
まぁそんな訳で、魔力のないルシフェルは落下しそうな感じだが、俺が身体強化した腕で支えられているので問題ない。ちょっと体制的に痛そうだが。
そしてこの場合、ルシフェル本人が浮いている訳ではないので、堕天使は飛べない法則には該当しない。空中で俺に引っ掛かっているようなものだ。
我ながら良い考えである。
「よっ、と」
ちょうど右にあたる魔法陣を、見えなくなるくらい遠くに蹴っ飛ばす。
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