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蹴っ飛ばした先は、ちょうどコワンのある方角だ。
ちなみにした方が見映えが良いのでやっているだけで、実は蹴る必要は全くない。別に触らずとも、自分でコントロールして動かせる。
飛ばした魔法陣は適当な場所で止める。何処に止まったかは見えないので全くわからない。とりあえずコワンのあたり。
そして重力をその魔法陣の方角へと操作。
もちろん次の瞬間、ルシフェルを抱えた俺の身体はその方向へと落下した。
俺の近くにあった魔法陣も、俺の動きに合わせて一緒に動かす。
が、問題発生。
ルシフェルにかかる重力のせいで、酷くバランスが悪いのだ。
先程までは本来のものよりも強めに重力をかけてバランスを取り、さらに床(代わりの魔法陣)に脚をつけていた良かったものの、脚を離した今ルシフェルにかかる重力も無視できなくなってしまった。
ルシフェルに引っ張られ、まっすぐ落下できない。
下の魔法陣に立つか?
しかし、果たしてそれは堕天使は飛べない法則に該当しやしないだろうか。ルシフェルが脚をつけなきゃ大丈夫だろうか。
試してみたら、大丈夫そうだった。
まぁ俺にかかる重力は右にある訳だし、落下中だし。俺にとってこの魔法陣は床でなく壁。あくまでルシフェルは、引っ掛かっているだけなのだ。
そこまで遠くに飛ばした訳ではないので、すぐに目的の魔法陣が見えはじめる。同時に、俺のいる場所より少しだけ南の方角に街が見えた。
あれがコワンか? だとすると、通り過ぎてしまいそうだ。
重力を操作し直し、俺はまた本来の重力とは逆さまに着地する。
遠くに飛ばした魔法陣は、こちらへと引き寄せて定位置へと戻しておく。
そして俺は何度か下への落下からの重力逆転を繰り返し、なるべく安全に地面へと近づいていった。
適当な高さで魔法陣を消して、俺は自由落下する。この高さなら、身体強化した身体で着地可能だ。
「ぎゃああああ落ちてるうう!?」
「喧しい」
その途中でルシフェルが目を覚ましたが、放っておく。
着地したそこは森――この世界は未開発らしく、森が多い。
「……前回といい今回といい、俺、高い場所がトラウマになったかも」
担いでいたルシフェルを降ろしてやると、彼は地面に弱々しく脚をついてげっそりとしてそう言った。
ちょっと悪いことをしたかもしれない。
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