409人が本棚に入れています
本棚に追加
コワンに着いたのはそれからすぐだった。
庶民的で親しみやすい雰囲気だった港町カルマールとは違い、コワンはさりげない高級感と清潔感の漂う町並みをしていた。
カルマールでは剥き出しだった大通りの地面は、コワンでは落ち着いた配色のタイルが敷き詰めてある。
中心に噴水などのオブジェが配置されている交差点もあった。
立ち並ぶ平民の住居や店であろう建物は石造りで、基本的に壁は白く、屋根はそれぞれ落ち着いた色に塗装してある。
道行く人の格好も小綺麗で、恐らく平民の中でも豊かな身分なのだろう。もしくは、この町の状態が良くて金に困る者がいないか。
どちらにせよ、この町がそれなりに平和なのは間違いなかった。
「御主人様、俺らって今何処に向かってんの? もしかして学院?」
街の奥に進むにつれて、他とは違う貴族向けと見られる豪華な建物も増えてきた。
ちょうど俺が道端に掲げられた『老舗魔道具専門店グレートベリー』の看板に気を取られていたところ、ルシフェルがそんなことを聞いてきた。
「いや、とりあえずギルドだな。それなりの金銭は先に調達しておきたい」
移動が面倒なことを除けば寝る場所は魔王城で良いにしても、服とかはさすがに普通のものを手に入れたい。
俺はともかくルシフェルは、いつまでも燕尾服じゃ目立って仕方がない。
ちなみにコワンにギルドが存在することは、昨日レリーに確認済みだ。
「ふぅん。どんなクエスト受けるつもりなんだ?」
「クエストって……、依頼な、依頼」
この世界のギルドはそんなにRPGチックじゃない。
「報酬が高いものなら基本何でも受けるつもりだ。俺らなら、相手がドラゴンだろうと勝とうと思えば勝てるだろうし」
「あぁ、まぁ確かに。魔王の御主人様と堕天使の俺。レベル上げも何も、最初からマックス値だもんな」
「とりあえずお前はゲームから頭を離せ」
コワンの中心街に建っていたギルドは、カルマールにあったギルドと見た目はほぼ同じ。石造りの建物に、観音開きの入口と褐色の暖簾。
ただ、カルマールのギルドに比べると二倍ほどその規模は大きい。カルマールのギルドが二階建てだったのに対し、こっちは見たところ四階建てだった。
最初のコメントを投稿しよう!