初めての任務

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 コワンに着いたのはそれからすぐだった。  庶民的で親しみやすい雰囲気だった港町カルマールとは違い、コワンはさりげない高級感と清潔感の漂う町並みをしていた。  カルマールでは剥き出しだった大通りの地面は、コワンでは落ち着いた配色のタイルが敷き詰めてある。  中心に噴水などのオブジェが配置されている交差点もあった。  立ち並ぶ平民の住居や店であろう建物は石造りで、基本的に壁は白く、屋根はそれぞれ落ち着いた色に塗装してある。  道行く人の格好も小綺麗で、恐らく平民の中でも豊かな身分なのだろう。もしくは、この町の状態が良くて金に困る者がいないか。  どちらにせよ、この町がそれなりに平和なのは間違いなかった。 「御主人様、俺らって今何処に向かってんの? もしかして学院?」  街の奥に進むにつれて、他とは違う貴族向けと見られる豪華な建物も増えてきた。  ちょうど俺が道端に掲げられた『老舗魔道具専門店グレートベリー』の看板に気を取られていたところ、ルシフェルがそんなことを聞いてきた。 「いや、とりあえずギルドだな。それなりの金銭は先に調達しておきたい」  移動が面倒なことを除けば寝る場所は魔王城で良いにしても、服とかはさすがに普通のものを手に入れたい。  俺はともかくルシフェルは、いつまでも燕尾服じゃ目立って仕方がない。  ちなみにコワンにギルドが存在することは、昨日レリーに確認済みだ。 「ふぅん。どんなクエスト受けるつもりなんだ?」 「クエストって……、依頼な、依頼」  この世界のギルドはそんなにRPGチックじゃない。 「報酬が高いものなら基本何でも受けるつもりだ。俺らなら、相手がドラゴンだろうと勝とうと思えば勝てるだろうし」 「あぁ、まぁ確かに。魔王の御主人様と堕天使の俺。レベル上げも何も、最初からマックス値だもんな」 「とりあえずお前はゲームから頭を離せ」  コワンの中心街に建っていたギルドは、カルマールにあったギルドと見た目はほぼ同じ。石造りの建物に、観音開きの入口と褐色の暖簾。  ただ、カルマールのギルドに比べると二倍ほどその規模は大きい。カルマールのギルドが二階建てだったのに対し、こっちは見たところ四階建てだった。
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