初めての任務

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 コワンから学院まではそう遠くなく、俺達が学院に着いたのはそれから二十分後のことだった。 「…………」  さすが貴族様の学校というか、その敷地ははっきり言ってコワンよりでかい。街より広い学校って、何事か。  さっき俺達は学院に着いたと言ったが、しかし今はその言葉を些か訂正したい。学院に着いたというより、校門を過ぎたという方が正しい。  何故ならあんなに大きな校門をくぐったにも関わらず、肝心の校舎はまだまだ見えない。いや、一応道の先に壮大な城が見えてはいるのだが、まさかあれが校舎だとは言うまいな。  ここから五キロはあるぞ! しかも緩やかな登り坂だぞ!  絶対歩いて移動することを想定されていない。馬車移動が当たり前だとでも思っているのか。いや、貴族なら当たり前か。 「……ルシフェル、走るぞ」 「はーい」  何で魔王と堕天使の基本移動がダッシュなんだよこんちくしょう。 「お前のせいだぞルシフェル」 「何で俺!?」  悪態をつきながら走れば、案外すぐに校舎(というか城)にたどり着いた。  中に入れば良いのか否か。ギルドの受付嬢が言うには、学院に行けば担当の者が待っているとか言っていたが……。  そう思ったところで、ちょうど巨大な城の扉がひとひとり通れるくらいの隙間を開けた。するとすぐに、その中から小さな人影が出てくる。 「……ごめん。ほんとは、校門で待ってる予定、だった。キミタチ、思ったより、早かった」  言葉を区切り過ぎて聞き取り辛い。  出てきたのは透き通るような水色の髪をボブカットにした、黒縁眼鏡の小柄な女の子だった。十二歳くらいか? 結構幼い印象を受ける。  脛の真ん中までの長さの黒いローブを身に纏い、どんな服装をしているのかはわからない。ローブの裾からは、白いタイツと黒いショートブーツを履いた足がひょっこりと見えている。 「ほんとに、申し訳、ない」  彼女はぱたぱたと小走りで俺達の元へとやってくる。城の扉は魔法がかかっているらしく、勝手に閉まった。 「キミタチ、ギルドの、ヒト? 依頼、受けた?」  寝ぼけたような無表情が普通らしい彼女は、表情を全く変えないままに俺とルシフェルを見上げて首を傾げる。 「あぁ。依頼を受けてきた」  俺が答えると、彼女は「そう」と頷いた。
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