神様のお茶会

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「百回目の転生、おめでとう!」  気がつけば、そこにいたのは神だった。  神は笑顔でそんなことを言って、酷く面白そうに私――いや、俺を見ていた。 「……はっ、冗談」  何がおめでとう、だ。  俺と神がいるのは、アンティークな雰囲気の紅茶専門カフェ、そんな感じの部屋。  円形の結構狭い部屋で、壁は一面が本棚。大小様々な古めかしい装丁がびっしりと並んでいる。  少しだけ、埃っぽいと思った。  部屋の真ん中に置かれた、これまた円形木製の机を挟むようにして俺と神は座っていた。 「冷たいなぁ」  にやにや笑いながら、紅茶の入ったティーカップを傾ける神。  神は床についても余るほどの長い白髪で、むかつくほどに美形だった。透き通るみたいな碧い目、それを縁取る長い睫毛。  神は会うたびに服装が変わっているのだが、今回の服装は部屋の雰囲気に合わせたらしく、不思議の国のアリスの帽子屋みたいなそれだった。  ちなみに俺はもう老婆ではなく、当たり前に当たり前の学ランを来た男子高校生だった。身長も体重も、顔も普通。何の変哲もないただの日本の高校生の姿。 「君も飲むかい?」 「……貰っておく」  答えた直後には、俺の前にすでにティーカップが置かれていた。一口飲んで、「うまい」とだけ神に感想を伝えた。  神のくれる食べ物が例外なくうまいことは、もう随分前から知っていた。 「百回生きて百回死んだ魂はいくつかあるけれど、君はその中でもとくに面白いね。まるで僕のような考え方をする!」  神は酷く面白そうに、にやぁとした笑顔を浮かべる。  そしていつのまにかテーブルに出現した皿からクッキーを取り、神はそれを勢いよくがりっとかじった。神というより悪魔に似た鋭い犬歯がぎらりと光る。 「で、『幸せ過ぎて反吐が出る』この素敵な遺言の意味は? 僕はそれが聞きたくて聞きたくて、さっきからうずうずしてるんだ。早く答えてくれ」  俺は神の了承を得ることなくクッキーをひとつ食べ、そして答えた。 「……ハッピーエンドに、飽きてしまった。とくに、今回の人生はありきたりすぎる。当たり前に魔王を倒して当たり前にハッピーエンド。幸せいっぱい」
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