神様のお茶会

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 魂を最も破壊するのは、敵でも病でもなく、『時間』と『退屈』なんだ。  いつだったか、神はそう言った。  百回の人生を経験した俺は、その言葉の意味がよくわかる。  ありきたりの人生には飽きた。  誰かを愛することも、憎むことにも飽きた。  希望の光も、もう慣れた。  今の俺は、もっともっと刺激的な、絶望的な――そんな何かに飢えている。 「俺としては、むしろ魔王が勇者を惨殺し世界征服、くらいのどんでん返しが欲しいくらいだ」  それだけじゃまだ足りない気がするけれど、ないよりはましだ。勇者が勝つよりよっぽど楽しい。 「あっはー、それ良いかもね。今度やってみようかな」 「願わくば、次の人生はバットエンドかトゥルーエンドになるよう頼みたいね、神様?」 「考えとくよ」  神はそう冗談めかし、「じゃあさ」と話題を変えた。 「『これは楽しかった、もう一回!』みたいな今まで人生はなかったのかい?」 「もう一回、ね……」  紅茶の底に溜まった砂糖をティースプーンで掻き回し、少し考えてから答えた。 「三十八回目。俺が女王に生まれ変わったやつ。俺が一言『やれ』と言えば、国民全員が平伏し従う。あれは愉快だった」 「……なるほどね、それは楽しそうだ」  俺の答えは満足のいくものではなかったのか、神は少しテンションを下げた。  しかしすぐに持ち直し、話を変える。 「さて、雑談はもうやめて、そろそろ本題に入ろうか」  神がそう言って立ち上がると、俺の手元にあった紅茶とクッキーは瞬時に消失した。名残惜しいが、まぁ仕方あるまい。 「君には今から、記念すべき百一回目の転生をしてもらう。今まで通り、行き先はもう勝手に決めてる。どんな世界だと思う? 剣と魔法の世界か、SFか、それともほのぼの日常系か」 「どれでもいい。ほとんど百回のうちに経験済みだ」  俺がそう言えば、神は「つれないなぁ」と言いながらやれやれと首を振る。 「ま、君は百の世界を経験してるわけだもんね。ちなみに正解は、剣と魔法の世界だよ」 「またか。勇者のパーティはもう二十七回も経験したぞ」  魔王は十六回も倒した。 「まぁまぁ、どうなるのかは行ってからのお楽しみ♪ さてさて、最期にふたつ、大事な話をしておこう」
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