-序章-

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僕がここに来たのは、まだ自分が何者なのか知らずに生きていた頃。 母さんに手を引っ張られて、ここへ連れられて来た。 ここが何処なのか、今は殆んど覚えていない。 なんとなく、この建物に入る時に十字架を見た気はするが、教会というわけでもない気がする。 暗い廊下を歩き、狭くて古い気味の悪い階段を上ったり下りたり……… どの位歩いたのだろうか、僕は息切れし始めた。 「ねぇ、お母さん。何処まで行くの?」 駄目元で聞いてみる。 「………」 予想通り、お母さんは何も応えない。 僕に顔を向ける事もなく、ただひたすらに歩き続けている。 「………」 僕は諦めてそれ以上何も聞かなかった。
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