序章

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静から動へ。 動から静へ。 よどみなく、滑らかに。 予定調和の極みが、由良の目の前で繰り広げられる。 由良の手は、日々の習練で馴染み込ませた動きを損なう事は無い。 だが、目と心は奪われている。 うつくしく舞う、白い髪の青年に。 今、由良が感じているのは、悠久なる刻の運び。 それを思わせる、北斗の舞。 (これが、巽の舞……) 遠目に眺めた事はあった。 巽の舞台は、由良にはあまりに遠く、高い。 そこに立つことは、未来永劫叶わぬ事と思っていた。 それを、今はこんなにも近くで見ている。 いつしか、由良の頬には涙が伝っていた。
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