一章

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「…あぁ、これは死ぬ」男の口から自然と漏れる 余裕のない声音が無意識に、特に意味もなく、枯れた喉から誰に言うでもなく絞り出される。 ーーこの世界は砂で覆われている。水は汚れ、風は濁っている ーー人は、この死にかけた……いや、まだ生きていると表現した方がいいのかもしれない大地の上で生きている。 (……何も残ってない) 意識が朦朧とする中で男は仰向けの状態のままバッグに手を突っ込み手探りで中身を確認する 中には現状では使いようのない金とここ二週間の砂漠旅で入ってきた砂だけだった 今は食料と水が欲しいところだが……今は砂漠のど真ん中にいるので、人はいないし、お金も使えない。オマケにここがどこなのか全くわからない。 砂漠の横断中に食料が無くなって、行き倒れをする等というマヌケではない……と思っている。思いたい。 さっきまでは自分に対して苛立ちを感じていたが今では自分への失望感で泣きたくなる 「……”母さん”に笑われる」 口の中にすら水気を感じずらい身体から冷たい汗が出るのを背中に感じた (それよりも生き残る事を考えないと……)と、思ってはいるが意識を失い欠けている状態では考えが進展しない 「だ…れか……」 男は灼熱の砂漠に身体を預けたまま意識を失った。
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