実家

1/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

実家

「はあ~」 今スミコは実家の門の前に立ち、中に入る心の準備をしている。 今日のスミコは、グレーのインナータートルに鮮やかなブルーのニット、白いパンツに膝下までのグレームートンブーツ、短目の黒のダウン、という姿だ。 もともと色白で美人、背も高く、スタイルがいいこともあるが、その姿は、普段のスミコからは想像できないほど、凛としていて、隙がなく、すれ違う誰もが振り返る程だ。 「よしっ❗」 ビ〰〰〰 「はい、どちら様でしょうか?」 「スミコです。お母様。」 「お入りなさい。」 門が自動で開き、中に入る。 きちんと剪定された庭の敷石を歩きながら、スミコが「もう、無駄に広いんだから…」 と一言言うと、 「聞こえてますよ、スミコさん、無駄にとは何ですか無駄にとは。この庭は、お爺ちゃまが現役の時に…」 品のいい着物を着たスミコの母親である凛子が出迎えに来ていた。 「ごめんなさい。ちょっと寝不足で気がたってただけなの。気にしないでください。」 スミコは、長い話がまた始まると思い、早々にあやまった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!