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遊郭の一角、その揚屋への道を、三人の男が歩いていた。
「稲守(イナモリ)さんの歓迎会って……やっぱり此処ですか」
「良いじゃねぇか。
絶世の美女を指名しておいた。加えて美味い酒。
文句のある奴が居るか?」
「ねぇ君達、此処って何処なんだい?」
一人は呆れたように、一人は何処か楽しげに、一人はキョロキョロと辺りを見回しながら、それぞれそう言う。
最後に口を開いた男性は、この日本には珍しく青みがかった髪と、深い青緑の瞳を持っている。
彼に限らず三人とも、何だか独特なオーラを持つ男性達だ。
「何だお前、京の島原を知らねぇのか?
この島原の遊女は美人が多い」
「…………」
少し強面の男性がにやりと口角を上げて言った言葉に、蒼い男性はぴたりと足を止める。
「今……何て言ったんだい?」
「ん?
だから島原の遊女は──」
「僕帰る」
此処が遊郭だということすら知らないまま付いて来ていたようだ。
分かるなり、最後まで言葉を聞かずに踵(キビス)を返した彼の首根っこを掴む男性は、逃がすものかとでも言っているようで。
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