3/10
前へ
/15ページ
次へ
遊郭の一角、その揚屋への道を、三人の男が歩いていた。 「稲守(イナモリ)さんの歓迎会って……やっぱり此処ですか」 「良いじゃねぇか。  絶世の美女を指名しておいた。加えて美味い酒。  文句のある奴が居るか?」 「ねぇ君達、此処って何処なんだい?」 一人は呆れたように、一人は何処か楽しげに、一人はキョロキョロと辺りを見回しながら、それぞれそう言う。 最後に口を開いた男性は、この日本には珍しく青みがかった髪と、深い青緑の瞳を持っている。 彼に限らず三人とも、何だか独特なオーラを持つ男性達だ。 「何だお前、京の島原を知らねぇのか?  この島原の遊女は美人が多い」 「…………」 少し強面の男性がにやりと口角を上げて言った言葉に、蒼い男性はぴたりと足を止める。 「今……何て言ったんだい?」 「ん?  だから島原の遊女は──」 「僕帰る」 此処が遊郭だということすら知らないまま付いて来ていたようだ。 分かるなり、最後まで言葉を聞かずに踵(キビス)を返した彼の首根っこを掴む男性は、逃がすものかとでも言っているようで。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加