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そんな様子を苦笑しながら見つめていた優男風の男性は、ところで、と言って話を逸らす。
「土方さんが『絶世の美女』とまで言うってことは……指名したのは彼女、ですか?」
問われて土方と呼ばれた強面の男性──土方歳三は、またにっと口角を上げた。
「そう、島原一の遊女──紫太夫だ」
「やっぱり……」
名を聞いて、優男風の男性は何処かほっとしたような表情を浮かべる。
二人の口振りから、その紫太夫という遊女は特別なのだと理解は出来た。
が、
(遊女、って言われてもなぁ)
蒼い男性が乗り気で無いのは変えられない。
「俺は別に檜扇(ヒオウギ)でも良かったんだがな」
「私は嫌ですよ。
同じ遊女でも、紫さん程一緒に居て楽しい人は居ませんし」
「お前の場合、お座敷遊びの相手をして欲しいだけだろう、総司」
「彼女は他の遊女と違って、本気で相手してくれますから」
からかうような色を乗せて言う土方に、総司と呼ばれた優男風の男性──沖田総司は少しふてくされたように返す。
元服などとうに済んでいる歳であろうに、その様はまるで子供のようだ。
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