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兄弟か何かのようだな、と、蒼い男性──稲守侘助(ワビスケ)はふと思った。
結局侘助は、土方に逃がしてもらえないままお座敷に着いてしまった。
聞いた所によれば、本来なら一番位の高い遊女である太夫を指名すると、とんでもない額がかかるのだという。
だが紫太夫に限っては、他の遊女と変わらない額で会える。
代わりというべきか、滅多なことでは指名されても姿を現さないのだが。
今日は来ると良いな、などと小さく言いながら、沖田は少し楽しげな様子だ。
少し待っていると、やがて部屋の襖がすっと開く。
「お晩どす、旦那はん方。
呼んでくれはって、どうもおおきに」
優雅に礼をして、妖艶に目を細め、一人の女性が姿を現した。
「紫さん……。
今日は来ていたんですね」
「へえ。
沖田はんや土方はんが来はるよって、安易に休むわけにはいかへんさかい」
「相変わらず、お上手だな」
はにかんだように笑う沖田に、穏やかな京ことばで返しながら女性──紫太夫は綺麗に笑う。
それからふと侘助に目を移したと思うと、すっと目を細めた。
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