9/10
前へ
/15ページ
次へ
それから頷いた。 「彼女、最近辻斬りで身内を失ったらしくてね。行き場が無いらしいんだ。  島原で生活することに、彼女自身の了承は得てるから……あとは、お前が『うん』と言ってくれたら嬉しいんだけど」 「…………」 にっこりと笑って言った慶喜の言葉に、蘭丸はまた目を細める。 何という強引な。 少しの間じっと慶喜を見つめて、 ふっと蘭丸は息をついた。 「そうどすな。  他でも無い慶喜はんの頼みやし、引き受けまひょ」 「さすが蘭丸。そう言ってくれると思ってたよ」 「あんな言い方しといて、何を白々しい。  まあかいらしい子やさかい、すぐに安定した客もつきはるやろ。  最初は檜扇にでも付いて、新造の仕事をこなしてくれはったらええよって」 受け入れると言った蘭丸の言葉に返された慶喜の笑顔は無邪気で、楽しげでもあって。 そんな笑顔に、蘭丸はもう一つ、深い溜め息をついた。 二人の様子を見ながら、当の千歳はぎこちない様子ではいと頷く。 それから少し考えた様子を見せ、 「…………。  ……えっ、か……可愛い?」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加