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「待ちなさい! 篤! まだ話は終わってないでしょ!」
篤は、まだ話している途中の母・晶子から逃げ出すように、部屋のドアを大きな音をさせて思いっきり閉めた。
「ああ、うぜえ!」
小さくも、腹の底からの声を出す。
部屋の電気は付けずに、机の上のパソコンにまっすぐ進む。
電源ボタンを少し乱暴に押してから、どかっと音をさせて椅子に腰掛ける。
ぼんやり光りを放つ画面に向き直り、カーソルを動かし、目的の画面を開く。
『青春の怒り場』
そのページの一番上に書かれた大きなタイトル。
このサイトの名前だ。
『もう、我慢できない』
カタカタとキーボード叩いて、篤はそう打ち込んだ。
ここは、中高生が集まる掲示板サイト。
学校であった嫌な事や親とトラブルを抱え切れなくなった相談者が、そのはけ口として書き込んでくる。
同じ境遇にいたり、似たような経験を持つ閲覧者が、相談に乗ったり、意見をくれたり、時には叱ってくれたりすることで、相談者の溢れ出しそうな思いを受け止めてくれる。
篤も昨日まではただの閲覧者だった。
でも、今日はこのサイトの厄介にならないといけないようだ。
何回か「更新」ボタンを押していたが、篤の書き込みへのコメントはなかなか付かない。
サイト内を改めて見てみると、あるいじめの相談者からの書き込みに対するコメントが盛んにやり取りされていて、どうやら皆そっちに夢中のようだ。
そのせいで篤の相談に目を向ける閲覧者がなかなか居ないのだろう。
「んだよ、まったくよお!」
力任せに机を叩いて頬杖をつく。
いつも他の相談者の悩みには、それなりに答えてやっているのに、自分の番になったらこんな始末だ。
すっきりできるどころか、イライラがただ増すばかり。
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