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篤は今中学三年生の受験生だ。
勉強をするのは好きではないけど、今は仕方ない事だと思っていた。
それまでは、親ともそこそこうまくやっていけていたはずだ。
でも、一ヶ月前に彼女が出来た。
私立の学校に通う同い年の子で、篤と同じクラスにいる女子の幼なじみ。
たまたま写真を見たとかで、向こうから好きだと言ってきた。
初めての彼女だった。
正直に言えば、ハマった。
何をするにも初めてで、楽しかった。
彼女の学校はエスカレーター式だから受験もなく、時間があれば「会いたい」と言ってきた。
篤もそれに出来る限り応えた。
塾を休んでデートもしたし、図書館に行くと言っては休日を彼女と過ごした。
キスもした。
もう頭の中が彼女だらけになっていった。
しかし、それは意外な形で親にバレることになる。
成績だ。
赤ら様にテストの点数が落ち、塾の全国順位も急降下。
挙げ句に塾から最近休みがちだと、ご親切に親に電話までしてくれた。
父親は普段仕事で忙しいと言うばかりで、篤と顔をあわせる事も殆どないくせに、その件を知り、こんな時だけ偉そうに怒鳴りつけた。
しかも、篤にではない。
母親に、だ。
お前の教育が悪い、と。
母親の方は、前からいちいちうるさいところはあったが、それ以降、それは束縛とも言える厳しさになっていった。
物理的に無理がかかり、彼女とも別れることになった。
親がうるさくて、と別れ際に言ったら、このマザコン、と捨て台詞を喰らった。
その頃からだろうか。
篤は母の顔を見るのも嫌になっていく。
どこに行くの。
だれと会うの。
何時に帰ってくるの。
勉強はちゃんとしているの。
全てをうるさく思った。
言われれば言われる程、煙たく感じるだけだった。
そんな篤に、母親の口調は日を追って厳しくなり、言葉も荒々しくなる。
改善の余地ない堂々巡り。
それに気づかない母親。
積もりゆくフラストレーション。
篤はわからなくなっていた。
なんで、親の言う事を聞かなくちゃいけないのか。
なんで、あんなにうるさく言われなくちゃいけないのか。
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