0人が本棚に入れています
本棚に追加
ふとパソコンのディスプレイに目をやる。
「あ」
一つ、返事のコメントが来ていると表示されていた。
篤はマウスでそのコメントを開いて読んでみる。
初めに書き込んでから、もう二十分も経っていた。
『何かあったのですか?』
ハンドルネームは「ミケ」と書いてある。
もちろん本名ではないだろう。
篤も、ここでのハンドルネームは「ファイター」だ。
相手は女子だろうか。
多分飼っている猫の名前かなにかだろう。
篤のうちで飼っていた猫も、同じ名前だった。
篤は、その「ミケ」と名乗る相手に、少しずつ、でも正直に自分の親に対する苛立ちを打ち明けていった。
もうこれ以上我慢が出来ないかもしれない、と。
すると、暫くしてまたミケから返事が送られてきた。
『とても共感できます。 私も今日、同じような事があったので、 その気持ちよくわかります』
ミケはとても丁寧な文章で返事を書いてきた。
その後には、こう書かれていた。
『親は子供の気持ちがわからないんですよね。お互いになぜあんなに通じあえないのかな、と思います。毎日同じ屋根の下で生活して、顔をあわせているのに、全てが行き違うんですよね』
篤は、同じ環境にいるというミケに同意してもらえたことが、素直に嬉しかった。
理解してくれる誰かがいる事に、ずっと欲しかった安堵感を得る事が出来た。
何度かコメントの交換をした後で、篤はこう続けた。
『母親は俺を憎んでいるんだ。言う事を聞かず、そのせいで父親に怒られて、俺なんていなければいいと思ってるに違いない。それなのに、愛もない親の言う事を、なんで聞かないといけないのか、って気持ちになるんだ。わかってもらえる?』
最初のコメントを投稿しよう!