ミケ

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ふとパソコンのディスプレイに目をやる。 「あ」 一つ、返事のコメントが来ていると表示されていた。 篤はマウスでそのコメントを開いて読んでみる。 初めに書き込んでから、もう二十分も経っていた。 『何かあったのですか?』 ハンドルネームは「ミケ」と書いてある。 もちろん本名ではないだろう。 篤も、ここでのハンドルネームは「ファイター」だ。 相手は女子だろうか。 多分飼っている猫の名前かなにかだろう。 篤のうちで飼っていた猫も、同じ名前だった。 篤は、その「ミケ」と名乗る相手に、少しずつ、でも正直に自分の親に対する苛立ちを打ち明けていった。 もうこれ以上我慢が出来ないかもしれない、と。 すると、暫くしてまたミケから返事が送られてきた。 『とても共感できます。 私も今日、同じような事があったので、 その気持ちよくわかります』 ミケはとても丁寧な文章で返事を書いてきた。 その後には、こう書かれていた。 『親は子供の気持ちがわからないんですよね。お互いになぜあんなに通じあえないのかな、と思います。毎日同じ屋根の下で生活して、顔をあわせているのに、全てが行き違うんですよね』 篤は、同じ環境にいるというミケに同意してもらえたことが、素直に嬉しかった。 理解してくれる誰かがいる事に、ずっと欲しかった安堵感を得る事が出来た。 何度かコメントの交換をした後で、篤はこう続けた。 『母親は俺を憎んでいるんだ。言う事を聞かず、そのせいで父親に怒られて、俺なんていなければいいと思ってるに違いない。それなのに、愛もない親の言う事を、なんで聞かないといけないのか、って気持ちになるんだ。わかってもらえる?』
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