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聞いてくれることに安心して、篤はずっと気持ちの底辺にあった部分を書き込んでいた。
なんだ、寂しいだけか、と思われるかもしれない。
それでも、篤はここで聞いて欲しかった。
ここでミケに聞いて欲しかった。
このコメントへの返事は、少し時間が経ってから返ってきた。
ちょっと長い文章だった。
『ファイターさん。私はあなたの何を知っている訳ではありません。あなたのお悩みを完璧に解決してあげる事など、決してできないでしょう。私はただ、あなたのお悩みを聞いていると同時に、自分自身の悩みも共有させてもらっているのかもしれません。でも、一つだけ。一つだけ言わせてください。お母様があなたを愛していないだなんて、絶対ないと思います。お母様も、ファイターさんと同じ人間です。なかなか言う事を聞いてくれないファイターさんを、一瞬でも憎らしく思う事があったかもしれません』
ミケのコメントは、ここで一度改行され、意識的にそれ以降を目立たせて書かれていた。
『でも、忘れないでください。愛情の反対は憎しみではありません。愛情の反対は、無関心です。ですから、ファイターさんとお母様には、ちゃんと向き合う事さえ出来れば、必ずわかり合えるときが来ると思います。そのきっかけは、いつか必ず訪れるはずです。だって、親子なのですから』
篤は、そのコメントを何度も読み返した。
母親は、ヒステリックな小言を言う事は何度もあったが、一度たりとも篤を無視したことはなかった。
顔を見れば文句ばかりだったが、存在を意識し続けてきてくれたことは、間違いないのだろう。
なんとなく、力が抜けた。
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