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「だって友達を刺したんだぜ? 信じられねぇよ、オレには絶対出来ないね」
大仰に掌を振りながら、彼は砕けた口調で言う。
「だって、刺した時点でそいつは友達じゃないだろ。凄いな、仮にそいつが死んだとして、そいつは刺してきたやつを友達と思いながら死んだってことだろ? 綺麗だなぁ、綺麗だよ」
そうかもね、と僕は相槌を打つ。彼は満足げに頬を綻ばせた。
「オレが何処かの誰かさんを殺した時。あの人は笑いながら死んだんだ。一体何考えてたんだろうな」
無精髭を弄りながら、彼は沁みひとつない天井を仰いだ。
だから僕は、さぁね、とだけ言って部屋を後にした。
共に騙る 了
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