4.怪盗

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「え? 入院のお金ってセリが払ってるんですか?」 「あ……」  しまった……  みたいな表情を浮かべるセリ。 「……そうよ。  詳しいことは言えないけどね」 「だ、そうですよ灯香」 「わかったよ……  だけどさ、もうこんな危険な任務は引き受けるなよ。俺はセリのことが心配なんだよ」 「わかってるわ」 「あ、素直だ。  とうとうデレ期に入ったのか?」 「うるさい黙れ!  あんたが口うるさく言うから仕方なくよ、仕方なく!」 「ツンデレ、ごちそうさまでした」  これぞまさしく王道。  いいね。疲れが吹っ飛ぶよ。 「セリ、灯香は無視してください。  それよりどうして、その書類を盗むのが危険なんですか?」 「えと、まぁ……」  セリがチラッと俺に目配せしてきた。 「うちの学園の理事長には黒い噂があるんだよ。  人体実験をしているやら、人工的に魔物を造りだそうとしているやら、禁忌の精霊魔術の研究やら……  どれが本当でどれが嘘なのかはわからないけどな」  巧妙に隠蔽工作をしてるから、証拠が全然見つからないんだよな。  だから魔術省はもうなりふり構っていられず、銀色の猫に依頼したのだろう。
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