4.怪盗

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 口をパクパク動かしているということは、悲鳴を我慢してるのかもしれん。  可愛過ぎて抱き締めちゃいたいが、そんなことをしたら必ず声をあげるだろう。  ハーレムを形成出来ぬうちに死ぬのは、戦場に向かう武士が馬から落ちて死んじまうくらい惨めだからな。 『我慢するんだセリ。自分から蒔いた種だろ。  そしてゆっくり俺から離れるんだ。そうすれば何も無かったことになる』  コクコクと首を上下に振る。  やっばい! すげえ萌えるんですけど!  駄目だぞ! 理性を保つんだ俺!  セリは俺の言うことを聞き、ゆっくりと離反していった。 『よしよしいい子だ』 『イチャイチャが終わったなら早く4階へ行きますよ。  いつまでも警備の真ん前で立ち止まってるのはまずいです』 『な! イチャイチャなんてーー  ぐうう! ……行きましょう』  反論してる場合じゃなく、この場から立ち去るのが最優先と悟ったのだろう。  後で死ぬほど文句を言われそうだな。  足音などで気づかれないよう、抜き足で移動していく。  何かめっちゃ見られてる気がするけど、バレてないよな?  ちょうど横を通り過ぎようとした刹那ーー 『月宮灯香』 『うお!』  ヘリウムガスを吸い込んだような声が頭に響いた。  リアとセリじゃないよな?
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