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「姫様!!どちらにおいでですか!?姫様!!!」
パタパタと駆けていく足音と侍女達の叫ぶ声が廊下に響き渡る。
しばらくして侍女達が立ち去ると、コソリとまだ幼さを残す金髪の少女が一室のドアから顔を覗かせる。
彼女の名はカガリ・ユラ・アスハ。
先程走り去った侍女達が『姫様』と呼んで探し求めている少女だ。
彼女はキョロキョロと辺りを見回し誰もいなくなったことを確認すると、部屋から出てその場を離れようとする。
が、移動しようとする彼女の肩を後ろから掴む者があった。
「姫様、探しましたよ」
「げ、マーナ……!!」
カガリが『マーナ』と呼んだその侍女は彼女の『姫』という呼称には相応しくない反応を咎める。
「『げ、』じゃありません!さあ、もうそろそろ式典の時間ですから早く……」
「嫌だっ!!私がいなくたってお父様がいれば式典なんて出来るだろ!?」
そう吐き捨てて、カガリはマーナを振り切って走り出す。
マーナが『姫様!』と呼ぶ声が後ろで虚しく響いた。
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