デート

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****************** ぐちゃぐちゃになった髪を整えながら携帯を取り出す 別にアイツに言われたからじゃない 前々から思っていたんだ いつまでもうじうじしてんのが馬鹿らしくなっただけ ただ、それだけ 「もしもし、百合ちゃん?ちょっといいかな」 「何?今、忙しいんだけど」 「すぐ済むよ。聞いて貰える?」 「別にいいけど。なに」 付き合っていた頃より数段低い声が鼓膜を擽る あんなに甘く蕩けるような声が今では冷たくてまるで氷のようだ 「あのさ、俺まだ百合ちゃんが好きだ」 電話ごしにぺちぺちと何かを叩く音が聞こえる。 長い沈黙のあと、感情の籠っていない声が淡々と返ってきた。 「あっそ。でも私が好きなのは、圭介くんなの」 「…うん。ただ伝えたかっただけ…」 何故だかあまり胸が痛くない 元より諦めがついていたからか、よく分からないけど 「百合ちゃんはとっても魅力的だよ――幸せになることを願ってる」 違う誰かと、ね。
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