Episode.1

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「……タマ、遅い」 「お前が早いだけだし」  いや、お前がワンテンポ遅れてるだけだ。  タマこと児玉樹(コダマ・イツキ)は、お赤飯炊いてあげたいくらいのおめでたい頭をしてる。まあ、一応俺の友人だ。  おめでたい頭、というのが、もちろん中身的にもクルクルパーなのは否めないのだが、見た目からしてもおめでたい。  真っ赤、なんだ。  それはもう鮮やかな、赤。 「……」 「……何でこっち見てんの」 「や、別に」  赤髪とか。  どこぞの漫画に影響されたとしか思えないんだけど。  幸いなことにタマも顔だけはいいから、最も残念で恐ろしい事態は免れているが。  お前それはちょっとアレだぞ、とちょっとばかしオブラートに包んで指摘したこともあるが、ちっとも改めようとしない。  これはもうどうにもならないので、こいつにはこいつなりの美意識があるんだろう、と考えることにした。  将来的には黒歴史にしかならないだろうけど。  同窓会とかで再会した時、古傷えぐってあげたら面白そうだから今は黙っとく。 「……何、その黒い笑み」  無意識に顔に出てしまっていたらしい。  俺は「別に」と適当に言葉を濁して、視線をぷいっと逸らした。  見るに耐えない。  赤髪とか痛いだけだよ。
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