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教室を出ると、しとしとと音もなく降りしきる雨が窓の外に見えた。
季節はもう梅雨入りだ。
今日の朝、天気予報のお姉さんが「今日は午後から雨が降るでしょう」とにこやかに言っていたから別に驚かない。
すると、やべぇな今日傘持ってねぇよ、と至極うざったそうに呟く隣の赤髪。
「久志は持ってんの?」とか訊かれたから、常に折りたたみ傘を持ち歩いていることを告げるとタマがぴたっと動きを止めた。
「え、まじで? ……お前ってそーいうやつなの?」
俺を指差し、切れ長の目を大きく見開いて問うてくる。
タマの無教養は今に始まったことじゃないが、お前、人を指差すなって教わらなかったのか。
「は?」
「めっちゃ意外。びっくりした」
「いや、お前天気予報とか見ないの? 今日午後から雨マークだったけど」
「全然見ない」
天気予報チェックするなんて久志は主婦みたいだな、とタマが小声で呟いたのを俺は見逃さず、無言でゲンコツを落としておいた。
「っ、地獄耳!」
後頭部をさすりつつ、恨めしそうな目つきで俺を睨みつけてくる。
何とでも言え。
「ところで久志」
「んだよ」
「俺傘ないからさー、相合いガ」
「無理」
男と相合い傘とか有り得ない。
絶対無理。
「この薄情者!」
だから、何とでも言えって。
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