想いは空回り

2/6
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「愛してる」「大好き」「別れたくない」「ずっと一緒だから」  ずるいな、と苦笑しながら私はその言葉を受け入れる。縋(スガ)りついてしまいそうな甘い言葉に、どれくらいの女性が騙されているのだろう。  本当の気持ちが隠されているのかどうかなんてわからない。その言葉が嘘だらけなのかもわからない。  ただ私は自分からは手離せないのだ。この関係はおかしいのだろう。おかしくて理解できないものでも、それでもお互いの中では別になんの問題もないのだ。  乾いた音が響く。  じんじんと痛みを訴える頬を無視して、私は目の前に女性を見つめた。  美しく派手な容姿。  はらはらと涙を流し、嫉妬に顔を歪めた表情が羨ましかった。  私にはそれほど必死になって食い止めるものがない。彼との関係は、向こうが切り出さないからずるずると続けているだけだ。  もし、今まで見てきた女性と同じように別れを切り出されたら、私は必死にならずにあっさりと受け入れるだろう。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!