想いは空回り

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 自宅に近付いていけば、私が叩かれる元凶となる馬鹿な男がいた。年上の困った幼馴染みである。  私の姿を見つけて抱きついてくるお馬鹿から、別の女性の香りがする。そんなものは気にならないけれど、また叩かれたり文句を言われたりするのかと考えるとげんなりしてくる。  無言で抱きついてくる腕の強さがきつくて苦しい。 「きつい。で、どうしたの? 彼女さんに何か言われて不機嫌とか? 今日は私の方がイラッとくることがあったんだけど」  背中に回されていた腕が力強く私を引っ張る。抱き寄せられてさらに息がしにくくなった。 「僕の彼女は君だろう? ねえ、そうでしょ?」 「苦しいって! あー、もうっ! 彼女だからさ、そうだから離して」 「だよね、そうだよね。僕の一番大切な彼女」  離して欲しいと願っているのに、反対に締め上げる馬鹿がどこにいる。ここにいるけど、人の言葉を聞いてなさそうだ。
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