強襲ノ女狐

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彼女が指差す先には、薄く『火気厳禁』と書かれているプレートが貼られた鋼鉄製の扉。      雄一は、重そうに扉を開ける咲を手伝う。先に中に入ったのは、アスハだった。      だが、部屋には何もない。 白を基調としたタイルに、煌々と光る無数の照明が反射しているだけだ。      「何も無いわよ」      アスハの呟きに咲が反応し、手を高く上げて指を鳴らす。      「キャ!?」 刹那、照明がパッと消え大きな電子音が部屋に木霊した。 すぐに照明は復旧したが、その時部屋の様子は一変していた。   ピストルから小型のミサイルまでの、あらゆる武器が壁一面を覆っていたのだ。   「好きな物選んで良いよ」   「好きな物って……」   戸惑う雄一と打って変わって、アスハは広い室内を文字通り飛び回りながら、武器を物色していた。   「雄ちゃんも早く選びなよ。選び終わったら、寝室に案内するから私に声を掛けてね」   咲はそう告げると、さらに今度は雄一の耳元で囁く。 「なにがあったか知らないけど、意地張ってないでしっかり仲直りしてね」 咲は不敵に笑って目を丸くする雄一の背中を押して部屋から出ると、なんとか扉を閉めて慌ただしく台座の方に向かった。
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