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アツシは首を傾げて、隣で二ヤ二ヤしている№0に向き直った。
№0はアツシから戸惑いを感じ取って、薄ら笑って口を開く。
「昨日、アスハが吉良博士の息子に連れ去られた」
№0の言葉を耳にした瞬間、アツシは大きく目を見開いたがすぐに首を左右に振る。
「俺っちをからかっているのですか? アスハは強いです。そんなはずがありません」
「でも残念ながら、それが事実なんだよ。まあ、単刀直入に話そう。昨日、アスハは地上に連れ去られた。君にはこの独房の囚人と共に彼女を奪還してきて欲しい。これは命令だ」
アツシは、命令だと聞かされても不服そうな表情を浮かべる。
「僕が嘘を吐くと思うかい?」
№0に言われ、アツシは信じられないと言わんばかりに表情を強張らせた。
№0はさらに続ける。
「タツキが死んで事態は急を要するが、とりあえず自己紹介とかを彼女と済ませておいて欲しい。あと、これが彼らの居場所を記した座標だよ。じゃ、また管理者を連れて戻る。それと最後に…」
№0は意味深に、そこで言葉を区切って続けた。
「…殺されない様に気を付けてね」
アツシが聞き返す前に、№0は彼の背中を押して扉を閉めた。
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