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『雄一様、コーヒーガ出来マシタ』
「おっ、ありがとう」
彼は、カイからコーヒーカップを受け取ってその匂いを嗅ぐ。
吉良雄一の朝は、どんなに遅くても淹れたてのコーヒーの豊潤な香りで始まる。
基本的に大学の研究室に、籠りっきりで睡眠時間が極端に短い。そのため、彼は朝のコーヒーで襲い掛かる睡魔を、吹き飛ばしているのだ。
「やっぱりこのコーヒーは最高だ」
雄一は、出来たてで熱々のコーヒーを一気に飲み干して、カイに空のコーヒーカップを向ける。
『オカワリハ要リマスカ?』
「いや、要らない。御馳走様、おいしかった」
『アリガトウゴザイマス』
カイは、マジックハンドの様に右腕を伸ばして、コーヒーカップの取っ手を掴む。
「じゃ、久しぶりに朝飯でも作ろうかな?」
『僕モ協力シマス』
「ありがとう。じゃあ、カイはトースト焼いてよ。俺は目玉焼き作るから。時間は三分。食パンをトースターに入れるだけだからカイでも出来るだろ?」
雄一は立ち上がると、ダルそうに肩を回しながら台所に向かった。
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