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「いでえ!」
「いや!」
二人の悲鳴は重なり、コンクリートの上を数メートル滑った後、止まった。
賑やかだった大通りも、今は誰一人として喋ろうとする者はいない。半ば白い目で2人を凝視していた。
「いでで……。ったくなんなんだよ」
仰向けに倒されたリクは激しく打った後頭部の痛みに表情を歪ませながらも、なんとか立ち上がろうと頭を上げた。
しかし、少年の頭に乗っかっていたのは、二つの巨大な山。
ムニュ
その山はリクの顔が当たると、形を変形させ、甘い匂いが少年の鼻をくすぐった。なんとも柔らかい山だった。
「なんだこれ。柔らけえな」
リクは二つの山の谷間に顔をうずめながら、まだ回転していない脳を使ってそれがなんなのか考えていた。すると――
「いったーい……もう、なんなのよお」
覆い被さるような状態から起き上がった人影の正体は、リクと年齢がさほど変わらないように見える少女だった。太陽によってより一層光る少女の金髪は後ろで一つにまとめられているポニーテールだった。
小顔だが目はパッチリ大きく、全体的に見てもかなりの美人だった。キレイというよりは可愛いと言う印象だ。
服装は露出度が高いが、少女の抜群なスタイルに見事にマッチしている。
少女は豪快に倒れながらも、右手にある古びた本だけは離さずしっかり持っていた。
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