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死の瀬戸際を歩くリクの表情は、これ以上ないほど充実感に満ちていた。
「ーStone waveー 荒波の大地 」
敵が土属性の魔法を唱え、大地が激しく揺れ出す。やがて大地には地割れが起き、リクを底の見えない永遠の闇の中へ落とそうとした。
だが、リクに焦りの様子はない。まるで、水溜まりに足を入れないようにケンケンしながら飛び越えていく子供のように、軽々と、優雅に全ての地割れを回避する。
その抜群な身のこなしに、敵も一瞬唖然として見ていた。しかし、すぐに我へと戻り、次の魔法を詠唱した。
「させるか!」
敵の意図を迅速に把握したリクは敵へ向かって一直線に突進した。その時、スタジアム全体が驚愕の声に包まれた。
体勢を低く保ち、一気に加速する。獲物目掛けて一直線に接近する。そのスピードは人間離れしていた。
「なっ……ッ」
この時、敵は初めて動揺を表に出した。無意識に詠唱を止め、迫り来る銀閃の刃に後ずさる。
リクの両手には、銀色の光沢を眩しいほど解き放つ二本のブロードソードが握られていた。一般的な剣よりもやや小柄な、軽量性に長けたものだった。
コンマ一秒の世界だった。敵が瞬きをした瞬間には、リクは懐に潜り込んでいた。
敵は自分の背丈よりある巨大な盾を構え、防御態勢に入った。敵の装備の中でも、この盾は一番目立っていた。戦闘スタイルも防御型だった。
この壁を突破するには、一筋縄ではいかないだろう。
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