prologue

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金属と金属が鈍い音を立て、次には爆発音が会場全体に包んだ。 砂煙が舞い、しばらく二人の姿は確認することができなかった。 観客の誰もが息をのんで見守る。 「へへへ。勝った」 視野が良くなっていく。 観客はみな無意識に席を立って、驚愕の光景に声を漏らした。 最強の防御力を誇る盾。 その盾が、今は真っ二つに折れて、がらくた同然となっていた。 「う、うそだ……」 ガデミアは全身を震わし、ただただ壊れた最強の盾を見ていた。 どうして負けたのか、どうして自分の自慢の防御がいとも簡単に破れたのか、当然理解することは出来なかった。 ガデミアは知らなかったのだ。 リクが魔法を何一つ使わずに戦っていたことを。 勝者はゆっくりと、力強く立ち上がった。 ガデミアには目もくれず、ぐるっと一回転観客を見渡し、そして両手の剣を高々と上げて見せた。 会場はこれまでにないほど盛り上がりを見せた。 みんなが我を忘れ、感情を爆発させている。 今ここに、新たなチャンピオンが生まれた。 その名はリク。 後に彼には二つ名がつくようになった。 ―シャイナロの武神― リクは喜びを素直に表現してはいるが、まだ満足とはいかない感じだった。 なぜならリクにとってこれが終わりではなく、始まりなのだから。 彼は次なる階段へ進んだだけにすぎない。 リクが目指す場所は遥かに遠い。 リク目指すべき場所。それは―― ―世界最強の剣士―
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