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1.
宝石のように光る海と、そんな海を鏡で写したような青一色の空の境界線上を太陽が上る。太陽の光は生命を活性化させ、澄んだ空気は心に元気を与え、新たな1日は、すでに始まっていた。
港の朝は活気に溢れていた。漁から帰ってくる漁船や、遠い国から遙々やってきた大型の客船。沢山の荷物を運んできた貨物船と、種類は様々だった。故に船の形、大きさも大小それぞれ異なっていて、見ているだけでも飽きることはない。
そんな港に、少年“リク"は足を踏み入れた。
海の男たちは、体格がしっかりしていて、硬派なイメージが強いが、リクからはそんなイメージとかけ離れていた。
だが、威勢だけは良さそうに見える。派手に暴れてるディープレッドの髪に、まだまだ幼さが残る顔立ち。しかし、眼力は強く、不適につり上がる口端を見ると生意気で強気な印象が伺える。
黒のライダージャケットに下も同じく黒のズボン。派手な外見とは反対に、服装は地味だった。服装で唯一目立っていたのは右腕に巻かれているボロボロの赤い布切れ。
そんな地味な服装だからこそなのか、リクの背中にあるそれは、余計に目立っていた。
それは、紅色の、ツーハンドソードの部類に入るであろう細身の大剣。長さはリクの背丈よりも大きかった。それは、その大剣が特別大きいものだからという訳ではない。
リクの身長は150㎝あるかないかといったところだ。男性にしてはかなり小柄である。貨物船から荷物を運ぶ男たちはみな大男ばかりだ。大男たちとすれ違うリクは、余計小さく見える。
大男たちの足元を縫っていくように、リクは歩いていく。大剣は斜めに紐で固定されていたが、時折地面と接触して、乾いた音が地味に響く。
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