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人混みに飲み込まれながらも、リクはなんとかかき分けていく。
暫くその状態は続いたが、歩いていくにつれて、段々と人混みは緩くなっていった。
訳も分からず歩き続け、気付いたときには、中央に噴水が設置されている円形の広場のような場所に来ていた。
噴水の周りには色鮮やかな花々が植えられており、近くにベンチも設置されている。リクは初めて訪れた街の景色に魅了されながら、近くにあった石版に注目した。
――水の都 ソルメイル――
石版を見るや、リクは眼を閉じて、大きく背伸びをした。表情は充実感に満ちていた。
大きく息を吸い込むと、膨れ上がった肺を一気に縮ませるように、大声を出した。
「やっと着いたああ! ここがソルメイルか」
好奇心に満ちあふれているリクは周りをキョロキョロ見渡していて、なかなか興奮が冷めない様子だった。
だが、そんなリクのハイテンションがいきなりがた落ちした。何処からか鳴った苦しげな音が、少年の表情を歪ませたのだ。
「は、腹減った……」
その音の正体は腹の虫だった。周りにも聞こえそうな程の音量で盛大に鳴り続けた。
リクは腹をさすりながら、飲食店を探すことにした。
「取り敢えず……適当に歩いてみるか」
独り言を呟くと、東西南北に通じる大通りのうち、どの道を進もうか考えた。先程通ってきた道を除けば、3つに絞られる。
何度も唸った後、一番人の通りの多い北の道を選んだ。
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