高所愛好家

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
放課後、僕は或る人物に毎日会っている。 窓から降りられる、学校の屋上と言えるかどうか怪しいそこで、いつも空を見ている彼女。 名前は知らない。 「今日も来たのね」 彼女は振り返りもせずに言った。 まぁ、確認なんてしなくても、この時間にここに来る奴なんて僕くらいなんだろう。 「今日こそ、毎日ここに来るわけ教えてよ」 ここで彼女を見つけてから、今日で丁度百日目。 「だからさ」 彼女は振り返った。 一緒に、長めの茶髪が風になびく。 「君こそ、毎日飽きもせずここに来る理由教えてよ」 一瞬躊躇った顔をしてしまった。 「……毎回言ってるだろ、教えてくれたら教えるって」 毎日毎日、百日間投げられ続けてきた言葉たち。 「はぁ。……だって、この場所にいるとさぁ」 でも、今日は違った。 「いつでも死ねるんだってわかるから、安心するじゃん」 口調とは裏腹の、笑顔とは真逆の返答だった。 「やめろよ、そんなこと言うの。僕みたいな君が好きな奴が悲しむじゃん」 「やっぱり、君はあたしのこと好きなんだ」 どこまでも強気な発言。 「じゃなきゃ毎日毎日飽きもせずこんなとここねぇだろ」 彼女は寄っかかっていた手すりから離れ、僕を見た。 「安心しなよ、あたし死ぬ気ないから」 そして、何かを投げられた。 「好きな人に毎日会いに来てもらってるのに、死ぬ奴がどこにいるのよ」 それは、彼女と同じペンダントだった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!