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「まあまあ、皆、とりあえず座りなさい。」
誰よりも神妙な面持ちで、所在無げに部屋の隅にいる輝良くんとは対象的に、興味津々に無遠慮に辺りを見渡す耕也。
陽大は、奥のキッチンで、コーヒーを入れている。
「私は、部屋に戻るよ。」
親父さんはそういうと、樹が慣れた様子で親父さんの車椅子を押す。
「日奈のことで迷惑かけるが、皆よろしくお願いします。」
「も、もちろんです。」
輝良くんが、上擦った声で答える。
「おじさん、心配しないで。僕が最後まで、日奈ちゃんのことは守るから。」
樹が言うと、親父さんがわかってるよと、いう感じで頷いた。
親父さんが、自室へ戻っていく。
コーヒーが運ばれ、ソファー前のテーブルに並ぶ。
輝良くんが、耕也の腕を引っ張るように促して、床に座る。
テーブルを挟んで向かい合うソファーが二つ。
ここにいる全員が座るには、座席が足りない。
「俺達は、ここで。」
「いやいや、お客さんを床ってわけには。」
陽大が慌てて、ふたりにソファーに座るよう勧める。
「いいんじゃないの?好きにさせれば。」
親父さんに付き添っていた樹が居間に戻り、誰よりも先にソファーに座った。
「樹。」
陽大がたしなめるように、声をかけるが、樹は知らん顔だ。
「いいから、座って。」
俺は、真慈と顔を見合わせ、樹の向かい合うソファーに二人で座る。
陽大も、床に座る輝良くんたちに、申し訳なさそうに頭を下げてから樹の隣に腰を下ろす。
「ここで見聞きすることは、他言無用で。」
樹が皆を見渡す。
誰もが、黙って頷く。
「この集まりは、あれですよね?あの問題を解決するための…。」
耕也が、身を乗り出す。
「俺、立場的には、ここにいていいんですかね。あいつの親戚なんですけど。」
「もちろん。君のお陰で、日奈が抱えてきた問題の全容がみえたんだから。」
「それと、今日日奈ちゃんに会えますか?俺達の一番の目的は、それ…。」
「馬鹿!」
輝良くんが、横から耕也を羽交い締めにする。
「日奈ちゃんの旦那さんに何言うんだよ。」
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