13 ー英児ー

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「まあまあ、皆、とりあえず座りなさい。」 誰よりも神妙な面持ちで、所在無げに部屋の隅にいる輝良くんとは対象的に、興味津々に無遠慮に辺りを見渡す耕也。 陽大は、奥のキッチンで、コーヒーを入れている。 「私は、部屋に戻るよ。」 親父さんはそういうと、樹が慣れた様子で親父さんの車椅子を押す。 「日奈のことで迷惑かけるが、皆よろしくお願いします。」 「も、もちろんです。」 輝良くんが、上擦った声で答える。 「おじさん、心配しないで。僕が最後まで、日奈ちゃんのことは守るから。」 樹が言うと、親父さんがわかってるよと、いう感じで頷いた。 親父さんが、自室へ戻っていく。 コーヒーが運ばれ、ソファー前のテーブルに並ぶ。 輝良くんが、耕也の腕を引っ張るように促して、床に座る。 テーブルを挟んで向かい合うソファーが二つ。 ここにいる全員が座るには、座席が足りない。 「俺達は、ここで。」 「いやいや、お客さんを床ってわけには。」 陽大が慌てて、ふたりにソファーに座るよう勧める。 「いいんじゃないの?好きにさせれば。」 親父さんに付き添っていた樹が居間に戻り、誰よりも先にソファーに座った。 「樹。」 陽大がたしなめるように、声をかけるが、樹は知らん顔だ。 「いいから、座って。」 俺は、真慈と顔を見合わせ、樹の向かい合うソファーに二人で座る。 陽大も、床に座る輝良くんたちに、申し訳なさそうに頭を下げてから樹の隣に腰を下ろす。 「ここで見聞きすることは、他言無用で。」 樹が皆を見渡す。 誰もが、黙って頷く。 「この集まりは、あれですよね?あの問題を解決するための…。」 耕也が、身を乗り出す。 「俺、立場的には、ここにいていいんですかね。あいつの親戚なんですけど。」 「もちろん。君のお陰で、日奈が抱えてきた問題の全容がみえたんだから。」 「それと、今日日奈ちゃんに会えますか?俺達の一番の目的は、それ…。」 「馬鹿!」 輝良くんが、横から耕也を羽交い締めにする。 「日奈ちゃんの旦那さんに何言うんだよ。」
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