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不安そうな紘稀を横目に、俺は音の方に走った。
普段は静かな森で、異様な声。
なんだか今日はついてない、と心の中でため息をもらす。
「ま、退屈なよりはマシか」
「でた、みっつんの口グセ」
俺の呟きに呆れ顔の紘稀を無視して走っていると、あの音の発信源と思われる場所についた。
その光景に思わず固まっていると、後からきた紘稀が首を傾げて俺の目線の先を追う。
「は……?」
思わず、といった感じに洩れた紘稀の言葉。
そこにあったのは、魔物の死骸だった。
確か、この魔物はランクが上位の奴だった気がするんだが……。
どうやら森の入口付近の草が枯れていたのはあの魔物が食べたせいか。
そしてそのすぐ側に、(言っちゃ悪いが)少し汚ならしい帽子を目深に被った、白銀の色をした髪の女が立っていた。
その髪が暗闇のなかで綺麗に光っていて、俺は呆然とその女から目を離せずにいた。
「ね、ねぇみっつん」
「あ……?あぁ、なに?」
「あの子、だれ?」
「……知るか」
白銀の髪の女は俺たちに気づいたのか、こちらをジッと見ていた。
魔物の死骸は灰になって消えたが、その血はまだ残っていた。
この魔物は、この女が殺したんだろうか。
女の顔は帽子と首に巻いているスカーフのせいでよく見えない。
うん、つかまずこの状況どうしよう。
「……敵?」
俺たちが戸惑っていると、女は一言、そう言って首を傾げた。
「え?いやいや!!俺たちは授業でここにいるだけで……ね、みっつん!!」
「え?あ、あぁ……」
パニクったのか、紘稀は慌てて女の質問に答え、俺に話をふってきた。
戸惑いながらも頷くと、紘稀は安堵からかため息をついていた。
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