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「でもさ、幾ら姉ちゃんでも兄ちゃんは渡さないよ。独占反対、むしろ私の物なのだー」
「……ふーん」
冗談めかして言う耶已葉と、冷めたように妹をあしらう百合の図。だったらまだ兄の久保は救いがあったのかもしれない。いや確実に救われていたと断言しても良い。
何せ実際は、両方共手が付けられないくらいの兄好きなのである。姉の百合は病んでいる方向に、妹の耶已葉は仲の良すぎる方向に進行してこじらせた具合だ。
姉はあざといアプローチを掛けて兄を独占し、妹はべったり甘えるように兄を独占し、今や兄を狙う1人の女性として決して埋まらぬ姉妹間があったり。
逆に、いっその事兄(おっと)1人に姉妹(つま)2人といった所帯を持とう、折り合いを付けてもいいんじゃないかなと思っていたり。まぁそんなの、日本の法律が妻2人や兄妹の2点で罰するのだが。
そういった2人が、ただの冗談を言い冷めた反応をしている訳が無い。それだけで済んでいるハズは無く。
実姉から殺気を剥き出しにされた上に包丁を向けられたり、対して妹は不敵に笑み余裕そうな顔で応えているのだから、何とも殺伐としている。
もし、この場に兄がいれば止めに入るような一瞬即発の状態。このまま兄を巡っての死闘が行われてもおかしくなく、世間を騒がせて一躍新聞の見出しに書かれたりするだろう。あんな兄を巡ってなのだが。
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