生い立ち

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ゆりは、小さな田舎町の、ごく普通の家庭に、長女として生まれた。2つ上の兄と2つ下の妹、そして7つ離れた弟との4人兄弟である。父は商売をしていた。母は専業主婦であった。 幼少期、小学校にあがった頃、ゆりは手のかからない、いい子だった。7つ下の弟の面倒をよくみていた。おむつを交換し、ミルクをあげる。泣き方だけで弟が何故泣いているのか解る程だった。好奇心が旺盛だったから、世話を焼くのも好きだった。 そのゆりの好奇心が災いしてか、家で何かが無くなると、すぐにゆりが疑われ、母から怒鳴られた。例えばハサミが見当たらない時などだ。ゆりが使ったわけでなくても、母は「使った物は元の位置に戻せ」とゆりを怒鳴りつける。母が犯人だったことも、兄が犯人だったこともある。しかし母はゆりを怒鳴ったことでスッキリしている。他の兄弟を怒ることはないし、ゆりに謝ることもないのだ。 ある日を境にゆりは「何でいつも私ばかり」と言うのが口癖のようになった。 それからゆりは、家族みんなから「ゆりは被害妄想が強い」と言われるようになり、それが定着してしまった。
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