生い立ち

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ゆりが小学5年生になったある日のこと、クラスでいじめがあった。女の子特有のよくあるいじめだ。ある日、その標的がゆりになった。それは突然の出来事で、朝いつものように教室のドアを開け「おはよう」と言うと、クラスのリーダー格のグループが教室の前の方で「来た来た」などとヒソヒソ話をしている。ゆりはいじめなどどうでもよかった。どうせ一週間もすればまた標的は代わるのだからと…。 しかし、毎日毎日のシカトに陰口。ゆりも精神的に疲れてきた。学校になんか行きたくないと思った。一ヶ月が経って耐えきれなくなった頃、ゆりは母にいじめのことを打ち明けようと決心した。 「おかあさん。実はね…私いじめられてるの。もう学校も行きたくない。」 すると母は「またアンタの被害妄想でしょ!」 ゆりは言葉を失った。深く傷ついた。この時、ゆりは“もう親にも兄弟にも何も言わない。どうせ全部被害妄想で片付けられてしまうのだから”と思った。 父は亭主関白で子どものゆりにとってはとても怖い存在だった。話すことはなかった。仕事人間で家に居る時間も少なかった。父に相談するという選択肢はなかった。 それからのゆりはなるべく家族を避け、一人で部屋にこもるようになった。ゆりは小さな頃から親に甘えたことがなかった。手のかからない子で居続けなければならなかった。 中学・高校と、家族と話すことはほとんどなくなった。だから、親にいろいろ相談している友人の話を聞いたりすると、とても羨ましく思えた。ゆりは小5の一件以来、親に学校での出来事などを話したことはなかった。 “高校を卒業したら家を出る!”ということだけ、心に強く決めていた。 高校に入学しても家嫌いは変わらなかった。友人にお願いしては寄り道をし、遅く家に帰った。夜遅くに友人から誘いの電話があれば、迷わず出かけて行った。おかげで何度も両親とぶつかった。家出をしたこともあった。父親からすごい迫力て怒られたこともあった。 でもそれも高校を卒業するまでの辛抱…とゆりは耐えた。バイトと遊びに明け暮れ、いよいよ高校も卒業間近だ。進学先はあえて県外ばかりを選んだ。成績の悪いゆりが合格したのは、たった一校だった。その学校には行く気がしなかった。どうしても浪人したかった。しかし所詮未成年、親の言うことは絶対なのだ。一人暮らしをさせてもらう約束をしていたはずなのに、合格が決まった途端「寮に入れ」と言われた。
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